「この年齢から始めても、もう遅いでしょう」
新しい仕事、やりたかった趣味、服装の変化、新しい人との出会い。
少し興味があっても年齢を理由に引っ込めてしまうことはありませんか。
50代になると、体力や見た目の変化を感じる場面は多いですよね。
それに仕事での責任や子供や親など家族の事情もあるので、若いころと同じように動けないことは確かにあります。
ただ、その「できない」の中に、やってみたいのにまだ試していないことまで混ざっていたらもったいない気がします。
今回紹介したいのは、心理学者エレン・ランガーの「反時計回りの実験」のお話しです。
70代後半から80代前半の男性8人に過去の時代を再現した場所で暮らしてもらったという興味深い実験です。
先に、この記事で伝えたいことを書いておきます。
年齢は思い込みで変わりません。
でも、思い込みにより
年齢にどんな意味を持たせるかによって
今の選択は変えられるのではないでしょうか。
50代の男性にとって、この実験を若返りの魔法ではなく、これからの自分の選択を変えるきっかけにしてもらえたら幸いです。
反時計回りの実験とは?過去を「今」として過ごしてもらった
ハーバード大学の心理学者エレン・ランガーが1981年に行った実験では、参加者が約20年前の時代を再現した環境で過ごしました。
そして「反時計まわりの実験」と呼ばれる検証実験の結果を発表しました。
70代後半から80代前半の男性8人が、1959年当時の状態に改装した修道院の中で5日間の共同生活をしてもらうというもの。
部屋にある家具や装飾品、テレビのニュースや番組、音楽、昔の個人的な写真などの小物に至るまで、ありとあらゆるものを1959年と同じように再現し錯覚を起こさせるように設えられていました。
男性たちは1959年当時の若い自分になりきること、そして当時の出来事をまさに今現在起こっているかのように話すよう指示されていました。
さらに、心の底から自分が40代50代であると思い込ませるために、彼らが現在の自分の姿を見ることができないよう鏡などは置かないようにしました。
1959年といえば男性たちにとっては、まだ40~50代のエネルギーに満ちあふれていたころ。
この実験の目的は「当時の思い出に浸りましょう」ということではなく「考え方の変化」です。
「自分は若いのだ、という思い込み(気持ち)」が、老化のプロセスに影響するかしないかを調べることでした。
この実験は、イギリスBBCでも放映されていたそうです。
そして実験開始から5日後…
高齢の男性たちの視力、聴力、体力、手先の器用さ、見た目、総合的な認知能力などに、明らかな若返りが見られたとのこと!
しかもその中の1人に1年半前に脳卒中を起こして歩けなくなっていた88歳の男性もいましたが、なんと自力で歩けるまでに身体機能が改善していたのです。
この実験は明らかに「自分は若いと思い込むことで心身が若くなる」ことを証明しました。
比較するグループも同じ施設で過ごしましたが、こちらは過去を過去として振り返りました。
| グループ | 過去との向き合い方 |
|---|---|
| 実験のグループ | その時代が「今」であるかのように過ごす |
| 比較するグループ | 過去の時代として思い出を語る |
ランガーは後年のインタビューで、両方のグループに改善が見られ、実験のグループのほうが大きかったと説明しています。
自分をどう捉えるかと、心身の状態との関係を考えたくなる話ですよね。
「もう50代だから」という思い込みで選択肢を消していませんか
この実験にから考えられる教訓をいくつか挙げてみますね。
ひとつ目は「歳だからもう無理」は思い込みかもしれない、ということです。
体が実際に若返るわけではありません。
ただ、自分で自分にブレーキをかけている部分は意外と大きいんです。
「もうおじさんだから」「もう50歳過ぎたから」という口ぐせが、行動の幅を狭めていないでしょうか?
ふたつ目は、環境が人を作るということです。
何を見て、誰と話して、どんな前提で毎日を過ごすか。
「年寄り扱い」される場所にいれば、人は年寄りらしく振る舞います。
逆に期待される場所では人は応えようとします。
職場でも家庭でも、同じことが言えそうです。
ただ、ひとつだけ正直にお伝えしておくと、この実験は参加者が8人ほどで比較の条件も十分ではありませんでした。
厳密な科学的証明とは言えないとされています。
のちにテレビ番組で再現されたこともありますが、これも研究としては限定的だったようで。
だから「思い込みだけで病気が治る」とまでは言えません。
それでも、考え方や環境、そして「自分で選べている感覚」が、心と体に影響する可能性は十分に示してくれています。
じゃあ、今日から何ができるでしょうか?
・「もう歳だから」という口ぐせを、一度やめてみる
・新しい趣味に、ひとつだけ手を出してみる
・人に任せていたことを、自分でやってみる
・昔好きだった音楽を、いまの気分で聴いてみる
・いつもの道で、新しい発見をひとつ探してみる
どれも小さなことです。でも、その積み重ねが、毎日の気持ちを少しずつ変えていきます。
年齢はただの数字です。
でも、その数字をどう受け止めるかは自分で選べます。
さて、あなたならどんな思い込みをはじめますか?

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